★刃物の話 その三

ステンレス鋼

Stainless Steel(英語)はステンレス鋼、ステン、 不銹鋼(フシュウコウ)と呼び、略号「SUS」から、サスとも 呼ぶ。 「stain-汚れ、錆び less-ない」 JISでは、鉄とクロム10.5%以上の合金、しばしばニッケルも 含まれる。とある。

―SUSの耐蝕性―

AlやCrは、錆びない金属の代表とされてきたが、実は、 これほど酸化し易い、身近な金属は無いのである。 その酸化膜は、通常大気中では絶対に金属表面を見ることが 出来ないほど酸化スピードが速く、ごく薄く、非常に緻密で 金属光沢があり、硬く、酸素分子が、通過しにくいので 酸化が内部へ進攻しにくいのである。 SUSはこのクロムの 酸化膜(不動態皮膜)が形成されるので酸化が内部へ 侵攻しにくいのである。鉄、銅、鉛などの錆びとは違う。 Crだけでは塩酸、硫酸などに弱いのでNiを加えることで 優れた、耐蝕性を発揮する。 SUSに限った話ではないが、異種金属を接触させると、 イオン化傾向の違いから、必ず電触が起こります。 たとえば、SUSの槽に、鉄管で配管すると、数年で鉄管に 穴が開いてしまいます。 SUSに錆びた鉄を、付けて置くと鉄の腐食が進み、仕舞には SUSも錆びてしまう、特に磁性を有するSUSは、自然に磁化し 鉄を吸い寄せる、それが錆びて、自身も錆びることがある、 これを もらい錆という。 塩素イオン・イオウ酸化物も嫌うので、塩素系洗剤・漂白剤 塩水・塩ビ焼却ばい煙・石油燃料の排気ガス・温泉水・火山灰 などとの、長時間接触には、十分な注意を払う必要がある。

―SUSの磁性―

これは市場にSUSが出回り始めた頃、呼び名を成分比で 言い表していた頃の話である。(JISで規格化され始めた頃) 18-8ステンレス(現SUS304)-磁石に付かない高価なSUS 13CrSUSー磁石にクッツク安いSUS-と呼ばれていた。 13CrSUSは使いこむと、艶が無くなり錆びが出易く 値段は安かった、新品では外見から判断が付きにくいので、 SUS製品を買う時に、磁石を持っていったと聞く。 今でも回収業者さんがソーッと、やっているのを見かけます。 と言うようにステンレス鋼には、磁石に付くのと付かない 種類がありなす。磁化するしないは,分子構造で決まるのだが Ni,Crの多いSUSは、磁性体になりにくい構造になるので、 まったくの間違いとは、言いきれないと思います。 最近普及してきた、電磁調理器は、鍋が磁性体でなければ 発熱しない、今までのSUS,銅,アルミの鍋では,まったく発熱 しないので真ん中に磁性体を張り合わせた、三層構造の材料で 作られるようになった。やはり磁石を持って買い物に・

―SUSの焼入れ性―

鉄の合金は、炭素がある程度以上、含まれていれば 焼入れは可能である。 当初は、Cを増やすと炭化クロムとして析出したり、Fe,C,Crの 化合物となったりして、合金としてのCr単体量が減ったので、 錆が出てしっまたり。その分のCrを増やし、Cを最低限の、 0.3%以下にしたので、十分な焼入れ硬さが得られなかったり。 焼入れ性を良くすると、耐蝕性が悪くなる。

また、Cr、Ni の硬さと粘さのために、特に天然砥石では まったくといっていいほど砥げず、刃が出なかった、 そのため、専門家の間では、SUSの刃物は、錆びないが、 砥げず、切れずのだめな刃物。とまったくの悪評であった。最近では十分な炭素を含み、焼入れ硬度も高くなり、 錆びにくい、SUSが開発されている。 砥石も、カーボナイト系、アルミナ系の砥石を使うことにより解消された。 このようにして、鉄の鋼で作った刃物に劣らない、SUSの 刃物が出来つつあるが、鉄よりも高い材料を使い、難しい 製法で作ったSUSの刃物が、錆びる刃物より安価な訳が 無いと思う。安すぎるSUSの刃物は、魔法を使って、 どこかで、手抜きをしないと、安価にはならないと思います。 真実を直視して、もっと賢い消費者になってください。

―クロムの毒性―

クロム単体や合金、三価クロム化合物には毒性がないが 六価クロム化合物は猛毒である、四価のクロム化合物は 発癌性があるということで騒がれてます。 しかし、人体を構成する必須元素のひとつである。 合金であるSUSは、食品の製造・加工、医療器具、 食器などに広く使われ、非常に便利な金属である。毒と薬は紙一重なのか?