★刃物の話 その一

―刃物― とは、対象に対し、圧力を可能な限り細く
集中(出来るだけ線に近く)させる構造を持ち、
対象を切断する為の道具・武具をいう。

皆が追い求める-良い切れ味‐とは
いかに良い”刃物”であっても ”腕” が悪ければ、
いかに良い”腕” であっても ”砥ぎ”が悪ければ、
いかに良い”砥ぎ”であっても ”刃物”が悪ければ、
どれを欠いても-良い切れ味-にはならない。
これはある先人の言である。

刃物の材料・加工の話

刃物の開発

太古には、石を割り砕いて作る打製石器や青銅製の剣などか 使用されていたが、脆かったり、切れ味が鈍かったりしたので 鋼の開発とともに鉄製刃物へと移行した。 当初は鉄鉱石を製錬したままの鋳鉄であった。 鋳鉄は脆く、すぐ折れてしまい扱いにくいものであったが 精錬技術が進み、鋼(ハガネ)が容易に作られるようになると 熱処理をすることにより強靭で鋭い、 いろいろな刃物が作られるようになった。

  • 製錬-鉱石から金属を取り出すことを言う。 (溶解温度1200°C以上 炭素含有量4.5%)
  • 精錬-製錬した金属から不純物を取ることを言う
  • 鋼(ハガネ)-炭素含有量0.3~2% ○○○鋼はコウと読む 昔は刃金の文字が使われた、 刃金―たたら製鉄製,鋼―溶鉱炉製鉄製と使い分ける人も
  • 軟鉄-炭素含有量が微量で焼入れ硬化が起きない鉄

日本における近代製鉄は、1850年頃各地に溶解炉が作られ 製鉄技術が輸入された、すると青銅砲から、鉄製砲へと 大きく変わり技術革新の幕開けとなった。 それまではタタラ吹きでの製鉄あったが、非常に不純物が 多く、粗悪鉄であった、それをタタラ吹きにより精錬し 玉刃金を作るが、良質な玉刃金は製錬された粗鋼の5%以下 しかとれず非常に貴重であり高価であった。

世界一の強度・切れ味を誇る日本刀は、その玉刃金を何回も 折り重ねて鍛えながら不純物を取り除き、最終的には重量が 数分の一~数十分の一になるほど鍛え上げると聞く。 この工程が炭素量も調整し不純物を取り除く精錬であろう。 この日本独特の精錬技術と、熱処理技術の発達により 日本の鉄製刃物は著しい発達を遂げた。 特に、タタラ製鉄~玉刃金から作られた”安来刃金”は 世界的に有名である。 しかし現在では溶鉱炉で作られた 商標名”安来鋼”も出回っている。

刃物の産地

戦国時代の城下町には、武器、武具を作り修理する鍛冶屋が 集まり、今でも各地に地名として残る、鍛治町が形成された。 城主や、武士の注文、修理に応じ刀鍛冶や鉄砲鍛冶、鎧鍛冶 などといわれ発展した、これに対し、庶民に身近な農具、漁具、 鉈、茶具などを作る野鍛冶と呼ばれる鍛冶屋が各地に点在した。 これら地域内での消費とは別に、産地として発展した地域が 各地にある。藩主が発展に力を入れ、近くに良質な砂鉄・炭が 取れ、交通の便が良いところに発展した。 越前・越後・信州・播州・土佐・肥後・濃州・雲伯地方などが、 有名である、明治以降、刀・鉄砲などの戦道具作りから、 日常刃物や工具作りへと変わってきた。 現在では、玉鋼から作られる刃物は刀剣、一部の大工刃物や 包丁等に限られ、近代製鉄法で作られた鋼で作られてはいるが、 用途に応じた、多種多様な刃物が作られている。 世界ではヨーロッパ・中国・アラビアなどに優れた鋼がある。 ドイツのゾーリンゲン鋼やスェーデン鋼などが有名である。

玉刃金の産地

古墳時代から玉刃金作りは雲伯地域のみで行われて来たと 言っても過言ではない。 極めて不純物が少ない、 どこよりも良質な砂鉄がとれ、古くから製鉄文化が発達し 都に近く、良質な炭が近くに取れ、製法の気密化も進んで いたので、タタラ製鉄による良質玉刃金作りは、他地方への 伝播は非常に遅れた。

  • 雲伯(ウンパク)地域―出雲(イズモ)の国と伯耆(ホウキ)の国の国境付近一帯 現在の米子市と安来市にまたがる地域
  • タタラ―空気を送る鞴(フイゴ)の別名 踏鞴と書く

※蛇足――作りすぎて・ 鉄の需要が増えたので、炭の生産を増やした、 すると中国地方の山々が”みなハゲ山になってしまった。” これ。笑い話では無くほんとうの話。 山を切り崩して砂鉄を取り過ぎたので、濁り水、鉄砲水で 下流の農業だけでなく漁業にもに大打撃。 最近の話では無く、何百年も前の話です。 何時の世も、目先だけで行動すると・。